12. 賃貸契約におけるテナントの責任
英国賃貸契約書の中で良く「テナント・ライク・マナー」という言葉を見かけます。この「テナント・ライク・マナー」とは一体どういう意味なのでしょうか? 直訳すれば「テナントのようなマナー」と思われますが、これこそが「賃貸契約におけるテナントの責任」を意味します。
テナントは物件を借りる上で、その物件を自分で所有しているかのように管理をする義務があるということになります。一般的に使われるサンプルとして以下の話を紹介致します。
① テナント・ライク・マナー
1935年にデニング上院が以下の様な条項を定めております。
「テナントは賃貸物件に住む上で適切なメンテナンスをしなくてはならない。冬に長期留守にする場合は水の元栓を締め、セントラル・ヒーティングの水を全部抜き、汚れれば煙突、若しくは窓も掃除すること。電球が切れれば交換し、ヒューズが飛べばヒューズを交換する。シンクのパイプが詰まれば詰まりを取り元に戻すこと。
つまり、テナントは道理にかなったメンテナンスをしなくてはなりません。又、故意/怠慢に物を壊すことは許されません。しかしながら時間に伴い自然劣化していくものについてはテナントにメンテナンス/修理義務は無いものとする。」
英文 ' The tenant must take proper care of the premises. He must, if he is going away
for the winter, turn off the water and empty the boiler; he must clean the chimneys
when necessary and also windows; he must mend the electric light when it fuses;
he must unstop the sink when it is blocked by his waste. In short, he must do the
little jobs around the place which a reasonable tenant would do. In addition he
must not, of course, damage the house wilfully or negligently…… but, apart from
such things, if the house falls into disrepair through fair wear and tear or lapse
of time or for any reason not caused by him, the tenant is not liable to repair
it.'
テナント・ライクマナーの一例として、冬場に長期休暇や出張で家を空けるときは、セントラルヒーティングを一日一定時間付くようタイマーをセットし凍結等防ぐ、など日本とは異なる対策が必要です。早い段階から英国の生活様式に慣れることが肝心です。
契約書の中で謳われているテナント義務を怠ったり、間違った取り扱いをする事で物件に故障・支障をきたしたりすると、家主から多額の弁償金を請求されるケースもあります。こような事態をを避けるためにもテナントとしての管理・修繕義務を忠実に履行する必要があります。又、劣化/自然磨耗により故障/支障が出た場合は契約上、すぐに家主に知らせる義務があります。放置して被害が拡大した場合はテナントの過失となりますので注意が必要です。
② 退去時に家主からよくある5つのクレーム
1. ベットのマットレスへのダメージ > 必ずマットレス・プロテクターを使用
現状、テナント退去時に家主より損害請求される最たるものがベットのマットレスです。小さいお子様がいらっしゃるご家庭では、オネショをしたり、飲み物をこぼしたりのアクシデントが付き物です。入居と同時に必ず、マットレス・プロテクターを購入・使用することをお勧め致します。
マットレスは内側の鉄製のスプリングがある為に、スチーム・クリーニングをすることが出来ません。一度シミを付けてしまうと、弁償は不可避ですので十分注意しましょう。ちなみに、マットレスでも値の張るものになりますとダブルサイズで千ポンド以上となってしまいます。
2. 机の上のヒートマーク > 茶碗や鍋等をおく時はコースターを使用
マットレスに次いで多発している損害請求は、熱いものを直に机等に置くことにより生じるヒート マークです。日本では鍋敷やコースターを使用することが多いと思いますが、英国でも例外ではありません。物件に付随する家主の家具が高級なアンティーク調の物である場合、退去時にこのヒートマークをとるためにの専門の職人を雇い、修繕作業を行うこととなります。1つのヒートマークを取り除く費用に数百ポンドかかるケースもあります。
3. カーペットにアイロンの形 > 安全な場所かラグ等のプロテクターを使用
アイロンの誤使用によるカーペットへの焦げ付きもよくある被害です。最近は板張りの物件も増えてきましたが、英国では家中カーペットという物件が多く存在します。一般的にアイロン掛けをするのはラウンジが多い様ですが、安全対策のため下にラグ(小さなカーペット)等を敷いてその上でアイロン掛けをすることをお勧め致します。カーペットは一度、焦げてしまうと張り替えしか元に戻す方法はありません。部分的に張り替えるのを嫌がる家主が殆どですので、その部屋全部を張り替えることになってしまいます。通常の賃貸物件で使用されているカーペットは物のみで1平米£20~£50が相場ですが、高級な物によっては倍ぐらいの値段になることと、職人がの技術料が別途かかるケースもあります。
4. カビの発生 > 物件の換気を日頃から心掛ける
十分な換気を行わなかったために発生するカビの問題も見逃せません。 一番カビが生えやすい場所は、やはりお風呂場です。日本人は欧米人に比べるとシャワーよりお風呂に入るため、蒸気がたちやすく壁の隅や、バスタブの周り、天井等にカビを発生させてしまうケースが頻発します。カビの原因となる湿気を排除するのはテナントの義務です。「換気扇が付いていない」「風が通らない」は、残念ながら理由になりませんので、テナント自身が日々換気を行う必要があります。壁が湿気で濡れているのであれば、お風呂上りにこまめに拭き取るなど、日々の小さな努力が後々の問題の予防につながります。
次に、ベッドルームも実はカビの温床です。小さいお子様がいらして家族数人で1つのベットルームで寝ている場合、人体から出る体温が室温を上げます。窓を開けず十分な換気を行わないと、窓枠、壁の脇、天井等にカビが生えることがあります。特に冬場は、セントラルヒーティングを使用することにより、室内と室外の温度の差により結露が生じ、室内湿度が高くなります。寒いのをグッとこらえ、毎日窓を開け換気するよう心掛けて下さい!
5. 壁に残るピンやブルータグの跡 > 家主の許可なしで壁に絵画などを掛けない
予め許可をとっても、壁は入居時の状態に戻すこと! ジェイエイシーストラットンズの基本契約書では、賃貸物件にて壁にポスターをセロテープやブルータッグで貼ったり、釘を打って絵画を飾ることを禁じています。これは壁に跡が残ったり、釘を打つことにより穴が開いたりすることを避けるためのものです。契約書には家主に許可を取らなくてはいけないことが記載されていますが、家主から許可をとっても退去時にはその跡やを消したり、穴をふさいだりすることことを要求されます。壁全体、部屋全体のペンキ塗装代を請求されるケースもありますので、穴を開ける場合は予め家主と書面にて合意を交わし、現状復帰に関する詳細等も事細かく詰めておく必要があります。
③ 基本的なお掃除 / メンテナンスの方法
近年家主がダメージとして請求するものの中に、掃除関連のクレームが目立ってきております。 基本的にテナントは契約上、入居当初の状態で退去時に物件を引き渡すこととなります。入居時にプロフェッショナル・クリーニングがされているのであれば同様にプロフェッショナル・クリーニングをして退去しなくてはなりません。入居時のコンディションはインベントリー・チェックイン・リポートに記載されますので、こちらを参照していただき、退去時の掃除の手配をして下さい。
又、普段から掃除されていない物件については、退去時にプロの掃除屋さんを入れても汚れがひどく、全て汚れが落ちないケースがあります。普段からの掃除は不可欠ですのでご注意下さい。
硬水のために生じる石灰の掃除
ロンドンは硬水で水道の蛇口、シャワーヘッド、電気ケトル(電気湯沸しポット)の内側に石灰が溜まりやすくなります。水道の蛇口やシャワーヘッドに関しては市販されているライムスケール・リムーバーをご使用下さい。電気ケトルに薬品を使用することに抵抗がある場合は、スーパーマーケットにて一番安いお酢(ビネガー)を購入し、お酢を3分の2とお水を3分の1混ぜて電気ケトルに入れ丸一日放置します。翌日、通常どおり内部を洗って頂ければライムスケールが取れるはずです。
ネットカーテンの掃除
ネットカーテンについては半年に1回、手洗いしアイロン掛けをせずに自然に乾かして下さい。 ネットカーテンはデリケートな材質となりますので、取り扱いには十分ご注意下さい。
ディッシュウォーシャーのメンテナンス (基本的には取扱説明書をご参照下さい。)
上記でも説明しました通り、英国は硬水であるため皿洗い機に使用するには水を軟水に替えなくてはなりません。硬水を軟水に変えるためには専用の塩(ソルト)が必要となります。この塩は通常スーパーマーケットにて購入することが出来ます。通常、皿洗い機内側の底か横側に塩挿入口が付いております。毎日使用される場合は1~2ヶ月に1回はチェックし、塩が減っている場合は足すよう心掛けましょう。塩なしに洗浄した場合は皿洗い機内部が石灰で真っ白になり、石灰(ライムスケール)の関係で製品が故障する原因にもなりかねませんのでご注意下さい。
又、内部底側の排水口にフィルターが付いており、お皿等に付着していた汚物が流れ込まないよう設計されています。このフィルターも頻繁(付着した汚物の量によります)に洗浄しなくてはなりません。このメンテナンスを行わないと排水が詰まり水が流れなくなりますのでご注意下さい。
洗濯機のメインテナンス (基本的には取扱説明書をご参照下さい。)
英国の洗濯機は日本の上側挿入タイプと違い横型挿入タイプが主流となります。通常、洗剤挿入口は洗濯機タイマー横に引き出し型に付いています。2度が出来るよう、メインの洗濯用の洗剤挿入箇所と2度目用の洗剤挿入箇所、柔軟材挿入箇所とが分かれています。洗濯を開始するとこちらに水が入り洗剤が洗濯機内へ流れ込み、洗浄を始める仕組みとなっています。この洗剤注入口は水が通るため、水垢(みずあか)が溜まりやすくなります。水垢が洗剤と一緒にドラムに入ってしまうと洗濯物にシミが付く等の支障が出る場合があります。時折引き出しを引き抜き、内側や外側を歯ブラシ等にて洗浄することをお勧めします。又、洗濯物挿入口の丸いドア本体部分のゴムは洗濯終了後に閉めっておくと内側に黒いカビが生えてきてしまいます。これを防ぐため、洗濯後はドアを開けっ放しにするといいでしょう。ゴムの湿り気が中々乾かない場合はタオル等にて軽く乾拭きすることをお勧めします。
板張りの床 / フロアーリングのメインテナンス
一般的に言われるラミネート・フロアーは水分に弱く、吸収すると膨らんで浮き上がったり、継ぎ目が外れてしまったりと支障が出やすくなります。もし水を使用する場所(洗面所等)でこのラミネート・フローリングが使用されている場合はラグや敷物を使用し、水による被害を防ぎましょう。
同じ色のフロアー・ボードを探すこと、部分的に張り替えることは非常に難しくなりますので、退去時に家主から全面取替え分の請求が来ることがあります。又、ラミネート・フロアーは非常に薄い構造となっており、傷も付きやすくなります。小さなお子様がいるご家庭では玩具等で傷をつけないようご注意下さい。尚、上から削る(サンディング)することは出来ません。
厚みのあるオリジナル・フローリング(家が建てられたときに敷かれたフローリング)は耐久性は高まるものの、ラミネート同様水分には気をつけて対応し、市販されているクリーナーやワックスを使用し、維持するよう心掛けましょう。